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本書で引用する佐藤達夫の編年観と呼応して、通説の北方編年観を批判していた山内清男が逝去(1970年)する直前に、諏訪在住の高名な考古学者から、日本先史考古学は「いつまで(山内流の)編年をやるか」という問いが発せられた。この発言は、その頃に学生であった「団塊の世代」には、自らの研究姿勢を問い糺す声として実に印象深いものであった。『月刊考古学ジャーナル』の「巻頭言」として、敢えて発表されたこの提言は、縄紋時代の日本列島を舞台としたものであるが、環オホーツク海域考古学に当て嵌めた場合はどのように受けとめられるであろうか。
環オホーツク海域内に登場した土器型式の年代観には、各地域の通説編年案と比べると、200年から時にはそれ以上に及ぶ大きなずれが認められる。したがって病が重篤であった山内清男に対して、その編年学研究を一言を以て非難した諏訪発の旧き提言は、北方圏においては何ら妥当性を有しないと評価される。すなわち先端的な理化学情報を適宜に付会して、その有効性を検証するための条件は、いまだ環オホーツク海域において十分に整えられていないと判断される。
本書では以下、そのような認識のもとに、近現代に繋がる環オホーツク海域の歴史事象を考察する際に広く参照されている通説の編年観とそれに基づく年代観を大幅に見直し、自然史・人文史上の実年代を付与した新しい交差編年体系の提示を主要な目標として掲げる。(本書「序文」から抜粋)
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