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本書は、2018年7月1日の総選挙で圧勝した現メキシコ大統領アンドレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(以下、アムロ)の選挙運動から政権1年目の「変革の政治」の取り組みまでを追った、この国の近現代史を専攻する著者の観察記録と考察である。そして本書の奥底には、もう一つ別のテーマがある。
それは、「天然資源にも、人的資源にも、相対的に恵まれたメキシコが、なぜ国民が安心して暮らせる豊かな近代国家になれないのか」という問い、これまで幾多の研究者たちが取り上げてきた、古くて新しい問いである。メキシコはいつの時代においても貧富の格差の大きな階層社会であり、権力者とその仲間の特権層の汚職と腐敗、それを監視する制度の脆弱性と機能不全、それを無視あるいは容認する政治的・社会的・文化的構造が常に存在した。
しかし2018年の選挙で勝利したアムロは、「嘘をつかない」、「盗まない」、「政治家・官僚の特権剥奪」、「困窮者救済」などの公約を、施政1年目に実行に移した。これら一連の「改革の政治」が様々な不具合を抱え、拙速すぎるとの批判を浴びたのは事実である。しかし、自らの月給6割削減にはじまる政治家・上級官僚たちの「特権剥奪」から、困窮する高齢者への年金の倍増や貧困層若者世代を対象とする奨学金制度の拡充など、政権の初年度で実現させた成果は大きい。
本書では、3度目の挑戦で大統領の座に就いたアムロが、貧富の格差拡大・中間層の崩壊・貧困層の増大という新自由主義(ネオリベラリズム)経済政策による典型的な弊害と、麻薬カルテル群による深刻な治安悪化に立ち向かい、「国の在り方」を根本的に変えようとしている姿を紹介する。(くにもと・いよ)
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