本書では,金融市場で売買取引をしている一人ひとりのディーラーの行動や戦略を数理モデル化し,仮想的な市場を構成しようという金融市場のマルチエージェントモデルに焦点を当て,モデル構築の基本的な考え方から,実務的な応用までの一連の研究成果を紹介する。
【本書の構成】
1章「外国為替市場の概要」:外国為替市場の仕組みや金融ビッグデータから観測される統計的性質などについてまとめている。
2章「モデルによる為替市場のシミュレーション」:「決定論的ディーラーモデル」を用いて為替市場のシミュレーションを行い,ディーラーの行動と金融ビッグデータから観測される統計的性質の関係について述べている。
3章「確率論的ディーラーモデルによる金融市場のシミュレーション」:確率論的ディーラーモデルを用いたシミュレーションと理論解析によって,為替市場で観測される統計的性質の再現やモデルの特性について紹介している。
4章「ディーラーモデルの応用」:金融市場の特性を再現する時系列モデルであるPUCKモデルとの対応関係や,政府による為替介入のシミュレーションに関する研究結果を報告している。
5章「エージェントモデルによる金融市場の制度設計」:株式市場を対象として,人工市場を用いた制度設計に関する基本的事項をまとめ,最適値幅の推定などをマルチエージェントモデルを用いて議論している。
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