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自分の死が迫っていることを知らなければ、実は人間は「その日」を生きることなどできない。果たして、死はそれほど恐ろしいか、ということになると、私は少し疑っている。ーー夫である三浦朱門を在宅介護で看取ってから約2年。作家・曽野綾子は静かに、慎ましく一人の毎日を生きていた。
一汁一菜の食事をしみじみと味わい、新たな飼い猫の姿を横目に、これまで歩んできた年月の記憶に遠く思いを馳せる。優しさとはなにか、哀しみとはなにか。そして、人間がこの世に生まれてきた使命とはなにか。やがて否が応でも頭をよぎるのは、自分自身の「最期」をいかに迎えるかということ。
「私は、すべてを受け入れ、平凡な生活を心底愛する」。いずれは誰もが一人になる。そのとき、どうあるべきか。老いに直面するすべての人に読んでほしい、88歳の著者が至った「最後の境地」。
大ベストセラーとなった『夫の後始末』続編、週刊現代連載の待望の単行本化。
もくじ
第一部 夫の死、それから
最後の日、思い出すこと
私は取り乱さなかった
その日がしあわせであること
いつ捨てても、惜しくない体
慎ましく、変わらぬ日々
人間の運命は予測がつかない
「へそくり」を見つけて
夫へのささやかな仕返し
第二部 新たなる家族の来訪
ペットショップで猫を見かけて
同じ日課で生きる
それぞれの運命を受け入れる
欠けていることこそ、人間の妙味
夫の死後、しつらえたテーブルで
どこで飼うか、という難問
猫たちの上下関係
第三部 人間の器量
早寝早起き、律儀に暮らす
暑さの凌ぎ方に、昔日を思う
バカであることの偉大さ
老年の悲しさとは
「いい人」ほど始末に負えない
寛大さと優しさ
第四部 自分の後始末
私が死んだら、家族はどうなるか
死に場所をどこに見つけるか
「善悪」とは別の気休め
苦悩もまた、人間の資産
魅力的な人生を生きるために
そして死は迫りくる
寄り添って生きるということ
私たちに与えられた使命
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