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◆写生とは何か
鳥のうちの鷹に生れし汝かな
「ホトトギス」の巻頭句。「鷹の鷄二」の代表句、鷹へのオマージュである。この句は、青山高原に舞う鷹の姿や屏風に描かれている鷹からの連想によってのみ、詠まれたのではない。鷄二の証言によると、戦時中という「緊迫した歴史的背景」や、敵機に突っ込む特攻機という「切迫した心理の背景」があって、初めて詠むことのできた句。「鷹の鷄二」を生み出したのは、まさに戦争という非常時であった。写生の大切さを説いて倦まなかった鷄二であるが、写生以前の時代的・心理的背景が一句の趣向を決定している。
◆「一口にて申せば『鷄二は作者である。』といふに尽きるかと存候」。虚子は『年輪』の序にこのように書きました。これはもちろん鷄二に対する讃辞なのですが、「作者」という言い方に虚子の微妙な心持をうかがうこともできます。虚子の唱える客観写生からの逸脱を、さらには主観的な作為があることを、暗に指摘しているようにも感じられます。事実、当時の「ホトトギス」には鷄二の見事な俳句に、「こけおどし」や「身振り」を感じる俳人もいたようです。しかしそのように述べた虚子の真意は何であれ、まさに「鷄二は作者である」と言う他はありません。写生とは言葉を鑿として、一塊の言葉を詩として作り出す営みなのですから。
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