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本書は,EMアルゴリズムの定式化や収束性等の事項から,その周辺に関する内容を取り上げたものである。
EMアルゴリズムは,欠測のある観測データに対する最尤推定のための数値解法であり,アルゴリズムのシンプルさと様々な統計モデルに柔軟に適応できることから,医学・疫学,心理学,経済学・経営学など広範囲の分野で汎用的に利用されている。さらに,情報分野でも画像解析や信号処理,機械学習のための数値計算アルゴリズムとしても認知されている。これらの分野の専門書でも多くのページ数を割いてEMアルゴリズムの解説はされているが,その内容は対象とする問題に対してEMアルゴルズムをどのように導出していくかに主眼が置かれているように見受けられる。
そこで,本書では数値解法としてのEMアルゴリズムがどのような性質を持っているのか,また,その収束性はどうであるかといった基本的な事項とその理論的背景について概説する。また,統計的推測問題への適用を考え,EMアルゴリズムを用いた最尤推定値の漸近分散共分散行列と信頼区間の計算方法についても説明する。さらに,EMアルゴリズムの欠点とされている収束の遅さを改善するための加速アルゴリズムについても触れている。
本書の対象としては,EMアルゴリズムを初めて勉強する学部3,4年生から大学院生,EMアルゴリズムをツールとして使っている研究者や実務者を考えている。
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