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ウィトゲンシュタインは「哲学者」か、それとも「宗教者」か?
ひとつの孤独な魂が、強靭な理性と「神との和解」のはざまで悩みぬいた、感動のドラマ。
旧著から30年にわたる著者の研究の深化をへて、新たに発掘された『秘密の日記』『哲学宗教日記』と、「兵士」としての激闘体験とをめぐる考察を縦横にもりこんだ、宗教学からの独創的アプローチ!
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現代は科学主義の時代、合理性追求の時代、何よりも効率を重んじる時代、あらゆるものを数値化する時代である。工学者・技術者としての才能にも恵まれていたウィトゲンシュタインは、『論考』などで徹底的な思索をめぐらし、科学や学問つまり理性や合理性でカバーしうる領域を明確にした。と同時に、科学主義・合理主義・効率主義・数値化主義では割り切れない領域、つまり「語りえない」ものの領域を確保した。彼は「学問・科学の問題に私は興味を覚えるが、本当に心をひかれるということはない」とも語ったのである。エンゲルマンが述べたように、彼が「さほど重要でもないものの境界を定めるのに非常な努力をしているとき、彼が細心すぎるほど精確に調べているのは、あの小島の海岸線ではなく、大海の境界なのである」。ウィトゲンシュタインがいいたかったのは、「科学主義・合理主義・効率主義・数値化主義で割り切れないものこそ、人間にとって本当に大切なものなのだ」、そして、「それはちっぽけなものではなくて、われわれを一呑みにする巨大で深淵なものなのだ」ということである。
ウィトゲンシュタインの「人は、語りえないものについては、沈黙しなければならない」ということばこそを、現代人は深く味わうべきではないか。
(本文より)
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【本書の内容】
はじめに
第一章 ウィトゲンシュタインの生涯
第二章 第一次世界大戦とトルストイとの出会い
第三章 「語りえないもの」としての宗教
第四章 『秘密の日記』にみる『論理哲学論考』の基本的性格の成立
第五章 『哲学宗教日記』にみる「宗教者」ウィトゲンシュタイン
第六章 ユダヤ人意識と同性愛をめぐって
第七章 ウィトゲンシュタインの宗教観
終章 自分が「神に対して」語ることと「神について」他人に語ること
むすび
※本書は一九九〇年三月二五日に法藏館より刊行された『宗教者ウィトゲンシュタイン』の増補版です。
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