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人間はどういうきっかけで政治に関心を持つようになるか。その観点をもとに幕末から戦後までの日本政治思想史を広い視野で俯瞰する。
◆庶民はだれでも政治より自分の生活のほうがずっと重要である。仕事や家庭生活によほど行き詰まったときに、ようやく人びとは、ぼんやりと政治を意識し始めるのである。そういうひとりひとりの庶民に対して、国家は奉仕しなければならない。国家と市民社会の関係を変えなければならない。そのためには、まず思想家が先頭に立って、自分自身の経験や生き方をなまなましいことばで語り始めなければならない。自分だけ安全地帯にいて、いくら高尚な概念や論理をあやつっていても、国家と市民社会の関係は変わりはしないのである。一九四五年の敗戦以後、多くの若い知識人たちが自分を語った。あまたの高尚な思索の産物よりも、なまなましい経験の告白のほうが、政治のあり方を変えるのにずっと大きな力を持ったのだと、わたしは考えている。(「あとがき」より)◆
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