長いあいだ忘れられていたグノーシスの宗教の象徴言語や教義を、従来の研究とグノーシス文書を踏まえて総合的に探究する。今日の人間精神と思考に改変を迫る書。
1986年に出版され版を重ねた同書に、ハンス・ヨナスによる英語版第3版への序文を追加した増補版。
「グノーシスの諸宗教が述べている人間の存在の分裂と散乱は、今に始まったことではなく、人間が過去・現在・未来という時間と、自と他、または主と客という空間の概念を持ち、因果律に従う意識を育て、これを律する自我に目覚めて以来のことである。自我は必然的に、時空を離れ、因果律では解決できない多くのものを排除してきた。その結果、人間の存在の亀裂はますます深まり、散乱した心魂は疎外感に悩まされるようになった。こうして、ルネサンス以降、急速に発展した近代自我に問題が生じることになった。」(「訳者あとがき」より)
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