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半世紀以上にわたり人間学を探究してきた著者が,キリスト教人間学について,系統的,組織的に論述した他に類のない画期的概説である。キリスト教概論,キリスト教史として読めると同時に,キリスト教の多様な側面を描いたヨーロッパ文化論としても示唆に富む内容となっている。
聖書の人間観からその歴史的発展と現代に至る人間観の変遷をたどるとともに,人間観の主要課題:霊性・理性・感性,神の像,良心,対話,人格,罪,信仰の認識,愛,試練,人格共同体,生と死などを丁寧に説明し,さらにキリスト教社会における,人間と社会,人間の社会性,キリスト教の霊性,人間と歴史など広範なテーマを詳述する。
哲学,思想,文学,芸術から歴史,法学など幅広いヨーロッパ研究者の基本的素養になると共に,ヨーロッパ文化に関心を持つ読者にとっても,ヨーロッパの思想と文化の基底に流れる人間のあり方を見事に描いた本書は,座右の書として長く活用できる書物となろう。
キリスト教文化圏の人間理解とは何か。古代から中世に及ぶ複雑でダイナミックなその歴史は,近代になり世俗化して広範に展開するが,世俗主義とニヒリズムや自然科学などの影響も受けて,信仰自体が衰退し現代に至った。
環境問題をはじめ貧困や感染症,そして多様に浸潤する社会的病理現象など,今日,人類が直面する課題に対してキリスト教の可能性を問う,示唆に富む一書である。
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