烏帽子山綺譚

烏帽子山綺譚

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出版社
ふらんす堂
著者名
浅井眞人
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2020年6月
判型
A5変
ISBN
9784781412740

◆新詩集

時はゆくが またもどってくる 同じ顔してもどってくる



◆序

少々高い台地のうえに 烏帽子山という山があった

その名のとおりの形をしていたが くたびれて傾き 今にも崩れそうだった

どういうわけか 満月がそのうえをとおると わずかに斜面がへこみ

それを繰り返すうちに 烏帽子のかたちになった

その山麓に 小さな村があった

消防団長が のど飴を頬張りながら 郵便配達に言ったこと

四月から五月にかけて 大満月の頃にそれは起こる

人がものに変わってしまうと水分神社の縁起絵巻にも その様子が画かれ それは何かの約束事とも言われている

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