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本書のカバーを飾るのは、中原中也と小林秀雄の鎌倉・妙本寺での「仲直りの図」。ときは中也の没年である1937年、海棠の花が散る美しい季節のことでした。
文豪には、その生涯を彩るエピソードとセットになった、土地の記憶が数多く残っています。
例えば......夏の夜、京都の街路をそぞろ歩くまだ学生服姿の夏目漱石と正岡子規。師・尾崎紅葉への軽口を許せず、自宅で徳田秋声に殴りかかった泉鏡花。銀座のバーで坂口安吾にケンカをふっかける中原中也。自宅の土蔵でロウソクを1本立てて創作に励んだという江戸川乱歩、川端康成の自宅庭先で歓談する、伊藤整と三島由紀夫、などなど。こうした逸話の舞台のなかには、私たちが訪れることができる文豪たちのゆかりの地がたくさん残されています。
本書ではそんな文豪30名の聖地エピソードを、特に交流の深かったグループごとに紹介しています。お互いの関係がよりはっきりわかるよう相関図も掲載。第五章は、「畸人作家列伝」としてここまでのグループに入りきらなかった個性的なエピソードを持つ文豪たちの豪快なエピソードをまとめています。
生身の人間でもあった文豪たちが実際の土地に残していった痕跡を愛で、往時に思いをはせていただけたら幸いです。
イラストレーション:鈴木次郎
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