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少年時代を独り野生児として育った「虎」が、畑を荒らして村人に捕まってしまう。処刑されそうになるところを四郎という少年に命を救われる。天草四郎と虎の出会いだった。そのころ、九州の島原と天草の切支丹に対する迫害は苛烈を極め、四郎の父親らを首謀者にして公儀への反抗が企てられつつあった。他方、老中・松平信綱は、三代将軍・家光の治世に不安を抱いていた。江戸に幕府が開かれて三十有余年、天下は徳川家の下に本当に治まっていると言えるのか。歯向かう大名家は無くとも、民草はまだ治まっていない。信綱の心の中に潜む闇が蠢く……。
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