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機械学習の書籍としておびただしい数の書籍が出版されているが,ななめ読みで終わる,もしくは難しすぎて読めないものが多く,「身につける」という視点で書かれたものは非常に少ないと言ってよい。本書は,100の問題を解くという演習のスタイルをとりながら,数式を導き,Pythonのソースプログラムを追い,具体的に手を動かしてみて,読者が自分のスキルにしていくことを目的としている。
本書は各章で解説のあとに問題を掲載している。解説を読んでから問題を解くこともできるが,まず問題から取り組む読み方もできる。その場合,数学の問題において導出の細部がわからなくても,解説に戻ればわかるようになっている。
「機械学習の数理100問」は,2018年後期と2019年後期の大阪大学基礎工学部情報科学科数理科学コース3年の講義でも使われ,また公開講座「機械学習・データ科学スプリングキャンプ」2018, 2019でも多くの参加者に解かれ,高い評価を得ている。また,その間に改良を重ねている。問題をすべて独力で解くのは,大学院生か学部の上位10%程度,もしくはその分野の研究開発に携わっていないと難しいかもしれないが,解説を読むだけでも十分な意味がある。
なお,本書は"Elements of Statistical Learning"(邦訳は共立出版『統計的学習の基礎』)や"Introduction to Statistical Learning with R"(邦訳は朝倉書店『Rによる統計的学習入門』)といった,統計的機械学習の世界的ベストセラーに準拠していて,レベル的にそれらの中間的なものになっている。前者は事典に近く,読者が何かを身につけるために書かれた書籍ではない。後者は初心者を対象として,感覚的な理解を促してパッケージを使わせることに終始し,本質に近づく視点が欠如していると言わざるを得ない。
本書を読むことで,機械学習に関する知識が得られることはもちろんだが,脳裏に数学的ロジックを構築し,プログラムを構成して具体的に検証していくという,データサイエンス業界で活躍するための資質が得られる。本書は「数理」「情報」「データ」といった人工知能時代を勝ち抜くために必須のスキルを身につけるための,うってつけの書籍である。
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