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藪医者のせがれと後ろ指をさされてきた由太郎は、医学の道を志しながらも挫折し、自分自身から逃れるように長屋暮らしをしている。
家を救おうと嫁入りを決めたものの婚儀の前夜に自ら命を絶った妹、梓のことも常に心に翳を落としていた。
風変わりな錠前屋、次嶺(つぎね)に出会うまでは――。
つかみどころのない、この男と過ごすうち、人と人ならざる者、あの世とこの世が交錯する江戸で固く閉ざしていたはずの由太郎の心に変化が・・・・・・!?
「なに、江戸にいればまた会えましょう。そう広い町ではございませんから」
そうだろうかと、由太郎は空を仰ぐ。
「今日だってほら、私とたまたま会ったじゃありませんか」
「本当にたまたまか?」と、由太郎は訝しげに次嶺に目をやる。
個性豊かな長屋の面々、見世物小屋の幼馴染。
そして江戸の町を、たゆたう次嶺・・・・・・
出会いが、心の鍵を開いていく――
まかふしぎ幻想江戸奇譚・・・・・・!
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