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裏店の看板「よろず相談承り」が心温める。
三年前、不意に家を出たまま、行方知れずとなっている妻を忘れられない青柳新八郎は、弟の万之助に家督を譲り、陸奥国平山藩から江戸へ出てきて、愛する志野を探していた。
今では浪人となって、独りで住んでいる裏店の軒に『よろず相談承り』の看板を提げ、見過ぎ世過ぎをしているが、米櫃の底にはわずかな米粒しか残っていない。
そろそろ毎日食べていけるだけの仕事を見つけねばと溜め息を吐いていると、ガマの油売りで浪人の八雲多聞がやって来た。
一昨日、地回りに難癖をつけられていたところを救ってもらった縁で、評判の巫女占い師・おれんの用心棒仕事を紹介するという。
渡りに船と話を聞けば、おれんは占いに欠かせぬ亀を盗まれたばかりか、脅しの文まで投げ入れられたらしい。
脅しの文には、「お前は世に仇をなす者だ、死ね」と書かれていたようだが……。
心がもつれた事件が持ち込まれる『よろず相談承り』の看板の下で織りなす、悲喜こもごもの人間模様。
珠玉の時代小説、シリーズ第一弾。
【編集担当からのおすすめ情報】
小学館文庫初登場!
テレビドラマ化された時代劇「桂ちづる診察日録」(原作『藍染袴お匙帖』シリーズ)でも人気を博した時代作家が描く江戸情緒をお楽しみください。
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