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百年を経ても心揺さぶる、自伝的長篇
アルフレッド・ポリーは貧しい商店主の家に生まれ、服地商の徒弟になる。父の遺産で自分の店を開いたものの倒産寸前。高嶺の花の少女にふられた反動で結婚した従妹の妻との仲もうまくいかず、ある決心をする――自宅に火を放って剃刀自殺をし、生命保険と火災保険を妻に遺して不毛な人生に幕を下ろすのだ、と。
『タイム・マシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』などの小説で「SFの父」と称されるウェルズだが、フェビアン協会に参加し、国際連盟の提唱、人権の遵守、英国の社会問題に取り組んだ社会活動家でもあった。
1910年に発表された本書は、徒弟身分の苦労を描いた『キップス』同様、自身の若き日を投影し、下層中産階級の苦悩をコミカルかつ哀切に描いている。人生の「おぞましい穴ぼこ」に嵌まり込んだ男の起死回生の物語であり、作家自ら、最愛の作品と認める自伝的長篇。
英『ガーディアン』紙は本書を「古今の名作小説100」に選出し、ウェルズを主人公にした伝記小説『絶倫の人』を書いたデイヴィッド・ロッジは、ウェルズ作品のトップ・テンに選んでいる。
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