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隊列を組んだものものしい出で立ちの市職員と業者80人が「関さんの森」にやって来ました。迎え撃ったのは平服の市民120人。「関さんの森」が強制収用されようとしたときの模様です。
「関さんの森」とは、千葉県松戸市の北にあるおよそ2ヘクタールの森林です。1996年に公益法人に委譲されて以来、市民に開放され、子どもの環境教育の場として、市民の憩いとケアの場として大いに活用されていました。「関さん」は元の地権者の名前です。敷地内には蔵や門など江戸時代の建造物も保存されていて、自然の中の歴史的・文化的遺産でもあります。ところが2000年代末、この森を引き裂くようにして都市計画道路が造られ、土地の強制収用手続きがはじまったのです。
「関さんの森」では23年前から「関さんの森を育む会」という市民団体が里山保全に努め、誰もが参加できる自然観察会やイベントを開催してきました。環境研究で世界的に高名なレスター・ブラウン博士も訪れ、「この森はとても気持ちがいい」と言って生態系保全の活動を高く評価してくれました。
「関さんの森を育む会」の会員たちと元地権者は、里山をできるだけ壊さないように道路の形を変更する案を提示しました。行政主導の開発に立ち向かってもしょせん勝ち目はありません。でも、黙って引き下がることができなかった。なぜなら、この森は、都市部にありながら生物多様性が豊かで、地元住民が自ら育て、活用し、運営している市民の共有財産だからです。つまり対立は公共性をめぐる闘いであり、単なる抵抗運動ではなく政策提言運動であり、自然との共存を目指す文化運動でもある――そう、これは市民による「まちづくり」をめぐる闘争なのです。
本書はこの運動の推移、市民が提言した道路変更案が実現されていく過程を描いたものです。あわせて現代における里山保全活動の価値や意義も論じます。本書を通じて、自然保護のために汗と知恵を絞っている世界中の人びとに心からのエールを送ります。(せき・けいこ)
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