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むかし、むかし。あるところに--海辺の町や山奥の集落で、口から耳へと語り継がれてきた「民話」。
東北で50年ものあいだ、一軒一軒その戸を叩きながら「民話」を乞うてきた民話採訪者が聞いたのは民話とともに語られた「民の歴史」、抜き差しならない状況から生まれた「物語の群れ」だった。
1934年生まれの著者が幼少期に経験した戦争。山と積まれた本が炎に包まれ灰となり、大事にしてきた教科書に黒々と墨を塗る。子どもながらに抱えた心の穴を埋めるべく、著者が東北の村を歩いた日々は50年を数える。
「あなたの話を聞かせてください」と乞う民話採訪者に施されたのは、民の口から語られた「この世の真実(ほんとう)」だった。
採訪日記を軸に、聞かせてもらった民話、手紙、文献などさまざまな性質のテキストを、旅で得た実感とともに編んだ全18話と、小野の独自の知性と姿勢に共鳴してきた若手表現者-濱口竜介(映画監督)、瀬尾夏美(アーティスト)、志賀理江子(写真家)の寄稿がおさめられています。表紙や本中には宮城県を拠点に国内外で精力的に活動する志賀が東北で撮りおろした写真を掲載。本のなかに響く声を、一字一字を精密に美しく組んだ大西正一によるデザインワークも魅力のひとつです。
※本著で「鉄犬ヘテロトピア文学賞」と「梅棹忠夫・山と探検文学賞」を受賞
※累計1万部を突破
■目次
はじめに
〈第一部〉
第一話 オシンコウ二皿ください
第二話 石のようになった人
第三話 わたしの「友だち」
第四話 かのさんのカロ
第五話 はるさんのクロカゲ
第六話 ひと山越えても鹿おらん
第七話 エゾと呼ばれた人たち
第八話 みはるさんの『冬の夜ばなし』
〈第二部〉
第九話 寂寞ということ
第十話 「捨てる」ということ
第十一話 母なるもの、子なるもの
第十二話 「現代の民話」について
第十三話 みんなみんな、ほんとうのこと
第十四話 一粒の豆を握る・一粒の豆を見失う
第十五話 「ふしぎ」の根をさがす
第十六話 山の民についてー猿鉄砲のむかし
第十七話 浜で出会った人たち
最終話にかえて ゆめのゆめのサーカス
本書再話作品一覧
〈寄稿〉
聞くことが声をつくる 濱口竜介
ものがたり灯るところへ 瀬尾夏美
幼き、死者の声 志賀理江子
あとがき
編集後記 清水チナツ
小野和子年譜
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