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幼き日の思い出、多忙な職業生活、そして老境の日々…。
厚生事務次官・宮内庁長官を歴任し、現在は昭和館館長である元官僚が人生の折節に書き綴った珠玉の“由なしごと”九十八篇。
―厚生省退官に際して、記者から尋ねられるままに「三十六年間の公務員生活を顧みて、ひとすじの純情を保ち得たかを自らに問うている」と述べたところ、某紙のコラムで取り上げられた。私としては、その時の心情を正直に語ったつもりだったが、少しばかり感傷に過ぎたかなと気恥ずかしくもあった。
貧乏と向き合った仕事がしたいというだけの素朴な動機で、しかし、それなりに熱い思いを秘めて、この役所に入ったのだったが、どっこいそう単純ではなかった。(......)凡人の悲しさで目前の難題をこなすのに手一杯となり、何のための、誰のための制度かという基本に思い及ばぬ場面もなかったとは言えない。しかし、心の隅では、かくてはならじという思いを常に持ち続けていたつもりだった。
(本文より)
―日がな一日子供と遊び暮らしたとされるあの良寛に『戒語』という、べからず集のようなものがあって、この中に慎むべきこととして「言うて詮なきこと」が挙げられている。ちょっと見には、「言うて詮なきことは言わず」ならば努力すれば何とかなりそうに思われる。だが、これもいざ実行となると結構難しい。確かに、言っても仕方のないことをくだくだ話しても、何も生まれないし、聞く相手もうんざりするだけなので、慎みたいところではある。
しかし、言いたくなるのである。「言っても詮ないことですが」と断りを入れながら言うのである。
(本文より)
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