原初の、学校

原初の、学校

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出版社
みずのわ出版
著者名
登尾明彦
価格
2,970円(本体2,700円+税)
発行年月
2019年12月
判型
A5
ISBN
9784864260398

まえがきより、抜粋
 一九七〇年代。高校進学率は高まり、定時制高校は困難な生活歴を有する生徒が多数を占める。大方は粗暴、低学力と受け取られがちだが、実際はまったくこれに反し、知性の高い生徒も少なくない。しかし定時制高校のこの実情は、正しく伝えられていない。私に言わすれば、定時制高校こそ学校であり、定時制には、そこでしか取り出されることのない生徒像が満載だ。実質はまさしく学校の、原初の姿を留めている。同和対策事業特別措置法の施行とともに、部落を初めとする、底辺層の生徒に寄り添った教育が展開された。
 だが八〇年代には部落解放同盟に敵対する兵庫県高等学校教職員組合(兵高教組)との抗争に翻弄され、行政の反撃も熾烈を極めた。九〇年代には同和対策の法切れに裏打ちされるようにして、生徒に焦点を当てた教育活動も翳りを見せる。世紀が変わり、二〇一〇年代になると、教育効率が優先され、管理教育が強化される。兵庫でおこった解放教育実践は、もはや跡形もない。湊川高校でさえそうなのだから、他は推して知るべしだ。
 七〇年代、湊川高校を起点にいっせいに取り組まれた教育運動。あれはいったい何であったか。今となれば、壮大な実験であったというしかない。あの烈しい闘い、茹だるようなあの夏の日を、書き残しておかなければならない。あったことを、なかったことにはできない。
 そのため、湊川高校を訪ねて、その軌跡を追ってみよう。むろんその中には私も登場するが、私については、案内人として顔を出す程度に留めるつもりだ。なお、できるだけ客観的な記述となるよう心掛けるが、引用を多用し、読み手の煩わしさを避けるため、私の地の文に繋げて記した箇所も少なくない。そのことを予め、了解を得ておきたい。

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