禽眼圖

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出版社
書肆侃侃房
著者名
楠誓英
価格
2,200円(本体2,000円+税)
発行年月
2020年1月
判型
四六判
ISBN
9784863853867

片側を闇にのまれてそよぐ樹を観ればかつてのわたくしならん



楠誓英の歌は片側の闇を何かに捧げている。それを神と言ってもいいし、生の根源的な苦と言ってもいいだろう。闇は光に先立つ。

だが、一首ののちに〈わたくし〉は自由を得て沈黙する。夜空を渡る鳥たちのように、存在そのものがおそらくは光の言葉となって。

水原紫苑







【五首選】

木の下の暗がりのなか雨をみる禽(きん)のまなこになりゆく真昼

薄明をくぐりて眠るわがからだ枕の下を魚(うを)が泳ぎぬ

ことのはの手前によこたふ幽暗よやまは深々とうずくまりをり

朗読の声の途切れて右耳からざんと抜けゆく白き両翼

透明な傘ゆゑ君の両肩は灯にさらされて夜に沈みぬ

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