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先に刊行された歌集『ガーコママの歌』の姉妹作で、短歌文芸誌「ぱにあ」に2015年から今年まで連載された文章をまとめたもの。写真をふんだんに入れ、自作の短歌作品もところどころに引用し、また各章の扉には著者が撮影したカラー写真を載せ、にぎやかな構成。長野県大町市での合鴨農法による米作りの実際がこまかく紹介され、合鴨との悲喜交々のつき合いが詳述されるのだが、その語り口の軽やかさが爽やかで楽しく、なんの苦労もなく読み進むうちに、農家でない人間には未知の米作りの季節ごとの諸々の仕事にいつの間にか親しくなっている。
地元の小学校の子供たちとの交流もみずみずしく感慨深く回想される。かと思うと、血縁の人たちが先の戦争をどうくぐり抜けたか、いかに傷ついたり命を落としたかも大切なこととして語られ、エッセイ集としての奥行きを広げている。著者は言う「私の右手は、飢えや戦火、殺し合いという苦しみ・悲しみを背負ってきた人たちと手を繋いできました。左手は、私の次の世代の子供と手を繋いでおります」。さらには、猿、鷹、鹿、熊など獣との戦いも息詰まる思いで読むことになり、この世界はからなずしも人間の専有物ではないことがしかと思い知らされる。
信州の自然に包まれた農の生活が、かけがえのない魅力とともに立ち現われてくる、貴重なエッセイ集だ。
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