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冷戦終結後、ポーランド・ルーマニア・ハンガリーなど旧社会主義国だった東ヨーロッパの文書保管所の資料が公開され、ホロコースト史学は大きく様変わりした。ホロコーストはアウシュヴィッツに象徴されるナチス・ドイツのユダヤ人絶滅計画に収まらない、ヨーロッパ各国の体制や地域住民が関わる複雑な現象として見直しが進んでいる。
本書では物語理論や文化史、比較ジェノサイド論などの影響が追跡される。ホロコーストをいかに語るのかは、「記憶をめぐる戦争」が進行中のヨーロッパでは死活問題なのである。
アウシュヴィッツの死体処理施設で働かされたユダヤ人=ゾンダーコマンド(特別労働班)がひそかに撮影した写真や地下に埋めた書き物は、「表象」以上に倫理の問題を提示している。そのひとりだったグラドフスキは、収容所内でオーケストラの演奏する音楽を聴いたときの驚きを書き遺した。
「ここではなにもかもが可能である。これは野蛮のハーモニーである」。
歴史についてどれほど多くのことが知られていても、ものごとの核心には暗くて不透明なものが残っている。同じ過去を表象するのにも多数のやり方がある。「限界に位置する出来事」であったホロコーストをどのように語るのかは、社会の状態を測るバロメータとなるだろう。歴史の方法論と思想史の最前線に立つ論考集である。
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