楽盗人

楽盗人

出版社よりお取り寄せ(通常3日~20日で出荷)
※20日以内での商品確保が難しい場合、キャンセルさせて頂きます

出版社
あるむ
著者名
さとうますみ
価格
1,650円(本体1,500円+税)
発行年月
2019年7月
判型
A5
ISBN
9784863331464

さとうますみ第三詩集。
 平易でどこかなつかしい言葉でつむがれる「失ってしまったかもしれない世界」の断片。記憶のように幻想のようにたちあがるふるさとのおもかげ。南国の海辺の町に生まれた作者の感性が、ふるさとを呼ぶ時、それは海面を光らせて豊かに匂いたつ。

  ふるさとの海に紺碧の潮が出入りする洞窟があった/引き潮はしゅわしゅわと鳴り/満ち潮はたぷたぷと岩を打った/洞窟は大きな楽器のようによくひびいた/くりかえしくりかえすわたしの時間も/空洞の中で歌のように響いているだろう(「空洞になる」)

 表題作は奈良時代の秘曲の楽譜から着想を得たもの。

  この曲を盗みたかったのはわたしだったかもしれない/わたしは/言葉のすき間にしのびこむ美しい光でありたかったから/月を磨くように泣きたかったから(「楽盗人」)

 形のない利益のない音楽を尊び欲する盗人に共鳴する。音楽はこの詩集全体に通底するテーマの一つである。同様に古典に取材した「大宜都比売(おおげつひめ)」「石長比売(いわながひめ)」「小町の鏡」からは、読む者の眼前に、ありありとした人格をもって女性たちの姿がたちあがってくる。
 作者にとっての「失ってしまったかもしれない世界」を想う心は、喪失だけではなく、形なきものに憧れ、傷つき、思索してきた多くの人々の思いと共鳴するものなのである。

お気に入りカテゴリ

よく利用するジャンルを設定できます。

≫ 設定

カテゴリ

「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。

page top