黄昏の夜明け

黄昏の夜明け

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出版社
新評論
著者名
ポール・ヴィリリオ , シルヴェール・ロトランジェ , 土屋進
価格
2,970円(本体2,700円+税)
発行年月
2019年10月
判型
B6
ISBN
9784794811264

昨年九月に逝去した世界的思想家P・ヴィリリオは、学者・編集者のS・ロトランジェを聞き手として行われた9・11(2011年米国同時多発テロ)直後の緊急対談と、その根底構造に迫る一連の対談とによって、本書で現代世界の最前線の問題を照し出します。
 9・11は「事故が兵器になる」グローバル社会の歪みを露呈させました。ヴィリリオはその背後にある世界構造の変化を明らかにします。情報と巨大エネルギーが結びついた事故は新しい戦争の形であり、もはや戦争は場所を選びません。その大変動に「地政学」や「核抑止」という古びた衣装で立ち向かおうとしても、もはや地理的な国境は、瞬間移動による富のフローが作り出す「格差という境」へと姿を変え、人々の移動を加速させ、場所を問わずに力を行使する高度な情報技術によって簡単に突破可能になっているのです。
 すでに台座がボロボロなら、その上に立つ像を修復しても意味はありません。ヴィリリオは、「身体」の速度が生み出す多様な時空を礎石にして世界の台座を組み直します。ヴィリリオがいう「身体」は、生物的身体、生態環境的身体、社会的身体という三つの身体の相互関係によって構成されています。近代は、治水灌漑や植民地などを通じた生態環境的身体・社会的身体の整備と破壊によって「現実」を作り出してきました。しかし今日、人類は遺伝子操作による生物的身体の整備と破壊をも始めようとしています。そこで行われる生物的身体の解体は、「完全な人間」を作り、異質なものを排除し、社会を解体するナチスの夢の再現へと繋がるものではないでしょうか? ヴィリリオ思想はそれに立ち向かい続けてきました。「現実」は在るものではなく、固有身体を通して作り出される出来事であり、「現実」に責任を負うのはあくまで人間なのだと。(つちや・すすむ フランス現代思想)

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