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【書籍の特徴】
精密機器の開発では,機械,電気ハード,そしてソフトの専門家達が集結する。試作1号機が完成した。これを破壊しないように,徐々に,高速化させていく。ところが,機器からは悲鳴が生じて仕様を満たせない。残念なことに,専門家三集団は,互いに顔を見合わせるばかりのことが多い。機器の悲鳴は機械振動だ。専門書を紐解くと振動の数学モデルが羅列してあり,いままさに発現している機械振動を無くす手段を記載してはいない。そのため,機械振動の解決は自分達のミッションではない,と言わんばかりの様相となる。
まず,機器に手をそえて振動のありかを探索してみよう。不明ならば,触診に代えて加速度センサを使えばよい。このセンサの設置場所を変えた計測を丹念に行う。次第に,機械振動の全体像がわかる。次にどうすればよいのか。機器の弱い箇所は補強すればよい。激しく動く箇所に対しては,減衰作用を持つ部材を挿入すればよい。本書は,実例を使って,上記のアプローチを詳述している。
【各章について】
1章では,機械設計と電気設計の境界領域に機械振動の問題が位置づけられるため,解決の対応が後手に回りやすい事情を説明している。2章では,機械を打撃するあるいは手動で揺らす,そして加速度センサを使った触診によって機械振動の姿を明らかにした事例を説明する。さらに,工学的な感性を使って振動問題を解決する。3章では,機械振動の問題に対処する場合に必要な最低限の道具立てを示す。インパルスハンマが無ければ,金づちを代用してかまわないのである。4章では,ステージの位置決め,振動センサにおける振子,あるいは電子顕微鏡の鏡筒振動という実例を使って,振動問題の解決の経緯を説明する。そして,終章では,気軽に機械振動の問題と向き合って欲しい,という本書執筆の狙いを記述している。
【著者からのメッセージ】
精密機器の研究・開発・設計者にとって一番目の優先順次は,専門分野の深耕に基づいて成果をだすことである。さらに,専門分野の裾野を拡げ,優秀な精密機器を世の中に出荷していくためには,仕様未達を招いた機械振動問題に果敢に挑戦していかねばならない。このとき,肩肘を張る必要はない。気軽に機械を打撃し,耳をすませばよい。このときの自然現象が解決の糸口を教えてくれる。
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