先史時代から現代まで、広大なる国土と悠久の歴史の中で培われてきた中国瓷磁の全貌を、詳細な解説と1400点余におよぶ圧倒的質量の図版により概観。20世紀後半以降の新発見・新知見も織り込んだ新訂の日本語版。
【監訳にあたって】
中国陶瓷の全貌を概観した大著に最新の知見を織り込んだ決定版
出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館館長)
中国の陶瓷器は、時に生活になくてはならぬ器物として文化史によりそい、時に歴代の皇帝の宝物として美術史の中で燦然と輝いている。また副葬品として、長き眠りにつき、再び姿を現したものもあれば、貿易陶瓷として海外にもたらされ、日本をはじめとして、各地で大切に扱われてきたものもある。新石器時代から現代にいたるまで、途切れることのない中国瓷磁の歴史は世界に類をみないものであり、その広大な国土と悠久の歴史の中で培われた陶瓷器の全貌を概論することは、尋常一様の努力では不可能であろう。
2005年に出版された大著『中国陶瓷史』は中国陶瓷研究の権威として著名な葉喆民氏(1924~2018)が長年の研究蓄積をもとに著したものである。2011年には増補改訂版が出版され、日本語版はこの増補改訂版を底本としている。
20世紀後半から21世紀にかけて中国陶瓷研究は飛躍的に進展し、次々と新発見・新知見が相次いでいた。今回、日本語に翻訳するにあたっては、著者から了解を得た上で、詳細な訳注などを加えてそれら新知見を織り込むとともに、挿図の一部を、出土地の明らかな作品や、評価の高い世界的名品とされる作品に差し替えを行うなどの改変を行った。掲載写真は実に1400点あまりにも及び、類書にはない充実したものとなっている。また、原著にある陶瓷器専門用語の中国語と英語の対照表に日本語の用語を加えたリストを巻末に付し、読者の便を図った。今後中国陶磁の研究者・愛好家に末永く読み継がれていくことを心より願うものである。
【本書の特徴】
1.増補改訂版『中国陶瓷史』(葉喆民著、2011 年刊)を底本とし、同書刊行後の新たな研究成果を盛り込むためその一部に変更を加えた、新訂の日本語版である。
2.中国陶瓷の歴史的、技術的解説にとどまらず、生活、文化、経済にも広く言及、中国陶瓷が世界を席巻した時代の壮大な文化史として、幅広い読者層を想定した内容となっている。
3.原著の写真図版の一部を中国内外での美術館、博物館の作品に差し替えるなどして、さらなる図版の充実を図った。
4.日本の読者に分かりにくい箇所、最新の文献情報などについては、適宜訳注で解説や付加情報を施した。
5. 巻末に中国陶瓷史に関する年表を付す。また「中国古陶瓷用語対応表」では、「古陶瓷用語」「古器種・器形」「など主要な用語を抽出し、中国語―英語―日本語の対応表を付し、学術的整理を目指した。
※なお、日本で定着している用字に基づき、本書名は『中国陶磁史』としておりますが、中国の「瓷器」と日本の「磁器」はその意味を異にする
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