取り寄せ不可
記憶を失った娘を導くものは、
初めて心に芽生えた、愛だった。
こんな寂れた路傍に、古ぎれのように行き倒れた女が……。
爵位や本名をゆえあって隠して暮らしている騎士のウィリアムは、
今にも息絶えそうな女性を捨て置けず、私宅へ運んで看護した。
3週間後、ようやく意識を取り戻した彼女は、
自分を介抱する男らしい彼をひたと見つめ、弱々しく口を開いた。
「あなたは誰? 誰なの……わたしは?」
ウィリアムは名も生い立ちもわからぬ彼女を“イザベル”と名づけ、
白魚のような指を見て、高貴な生まれかもしれないと考えた。
そしてある日、イザベルが発した言葉に、彼は思わず息をのんだ――
「その振る舞いや話し方。あなたはまぎれもなく爵位を授けられた人ね」
妹の命を守るため、ウィリアムはこの3年間、地位や特権を持つ騎士の爵位を隠し、風貌も変えて暮らしてきました。そんな彼の秘密を言い当てたイザベルの出自もまた、気になるところですが……?素性のわからない者同士、心と心が惹かれ合う、記憶喪失ロマンス。
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