冠動脈疾患のリスク管理のフロントライン
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2019年の12月には脳卒中・循環器病対策基本法が施行されるが、この法案の骨子の一つは循環器予防である。循環器病予防において重要なことは,動脈硬化を生理的・生化学・形態的観点から的確に早期診断し、その原因であるリスクファクターを厳格に管理し、動脈硬化に合併する心不全、不整脈、弁膜症の発症や悪化を防ぎ、突然死を抑制することである。
冠動脈疾患患者では、一般住民と比較して心血管イベント発生率が高いことから、その予防は臨床的にも医療経済的にも意義が大きい。これまでの疫学研究から高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、CKDなどが動脈硬化進展や心血管事故発症の危険因子であることがわかっている。また,危険因子の重複も多く、その重複によりイベントリスクが高まることから、包括的リスク管理が重要であることは言うまでもない。欧米の観察研究によれば、冠動脈疾患患者では複数の危険因子に対する管理が良好であれば長期予後も軽快することが報告されている。日本においても、2017年に発表されたJ-DOIT 3試験において、対象は一次予防の糖尿病患者ではあるが、長期にわたる血糖・血圧・脂質・肥満に対する積極的な介入の有用性が示された。心血管イベント再発の予防として、生活・運動習慣、食事療法、薬物療法を含めた積極的な介入が重要である。
近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)の進歩により、SNPなど多数の冠動脈疾患に関連する遺伝的マーカーが発見され、それらから遺伝的リスクスコア(genetic risk scores)を算出し、冠動脈疾患のリスクを評価する試みが多く報告されている。このような遺伝的要因のスコア化は、従来の危険因子とは独立した冠動脈疾患との関連が認められており、家族歴などを含む従来の危険因子との併用により冠動脈疾患の予測能向上への寄与が期待されている。今後の実臨床への応用に向け、わが国におけるエビデンスの蓄積や具体的な活用方法の確立も含め、さらなる解析手法の発展が望まれる。
本特集では、冠動脈疾患のイベントリスクをどう評価し、リスクファクターにどう介入することで、合併症を含めた冠動脈疾患予防にせまれるかを各領域の第一線の先生方にご執筆して頂いた。
本特集が読者にとって循環器病の予防の一助になることを期待している。
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