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神経美学(neuroaesthetics)とは認知神経科学の一分野であり,脳の働きと美学的経験(美醜,感動,崇高など)との関係や,脳の機能と芸術的活動(作品の知覚・認知,芸術的創造性,美術批評など)との関係を研究する新しい学問である。神経科学者だけでなく,心理学者,哲学者,アーティスト,美術批評家などが参画する学際領域であり,近年ヨーロッパや北米を中心に盛んに研究成果が発表されている。
本書は,その誕生から今日までの約15年余りの成果をわかりやすく紹介する入門書である。神経美学の定義からはじまり,絵画と音楽などの芸術の美や,道徳や数理などの「視えない美」における脳の働きを説明し,芸術や外面的特徴だけではなく,美が様々な対象に現れることを示す。つづいて,文脈や状況によって変化する美的判断の柔軟性,美しさと醜さの違い,悲哀の中にある美,美と快感の関係,芸術的創造性などについて,最新の脳機能研究成果を紹介していく。最後に,これまでの脳機能研究の視点から美的体験の認知的枠組みを示し,美の感覚はどのような機能をもち,われわれにどのような恩恵をもたらすのかを論じる。
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