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猫電話
∞
紅葉で
真っ赤な外から
もどるのは大きな黒猫
∞
キッチンに立つ二本の足を
クネクネとめぐり
無限大の記号をえがき
∞
猫は
ダイヤル式の
電話機になる
∞
それを両手でもちあげる
胸のところで
リンリンと呼び出し音がなる
∞
シッポであった
受話器を耳にあてる
おぼえのある声
∞
「もしもし
書物庫を『魂の病院』という
修道院はそちらですか」
∞
答えるまえに
あいてが
番号ちがいに気づく
∞
切れた会話で思いだす
(少女のころの二行詩
…あの子の影は
黒いチビ猫…)
∞
タイトルは『星月夜』
きっと
今夜は星がきれい
∞
ケトルがゆげをだす
∞
床におく黒電話
∞
姿のもどった猫が
のびをする
ラジオ放送の朗読番組、小川未明や宮澤賢治の童謡に耳を傾け、新聞の文化面の記事からは、おとなのさまざまな芸術運動を知った少女が、絵を描きながら過ごした日々。半世紀も前の少女時代からの作品に、心の軌跡をたどる詩を添えた、やさしい詩画集。
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