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テレビ時代劇「鬼平犯科帳」の主人公、長谷川平蔵役でお茶の間でも幅広い人気を誇った歌舞伎界の重鎮が、75年の半生を「です・ます」調の丁寧なやわらかい筆致で真摯に綴る自伝的エッセイ集。
著者自身が書名につけた「夢見鳥」は「蝶」の異名であり、吉右衛門の屋号「播磨屋」の家紋は「揚羽蝶」。この書名が著者の人生を象徴していると言っても過言ではありません。一代で名優にのぼりつめた初代の名跡を継ぐ宿命のもとに生まれ、その重圧に押しつぶされそうになりながら、先達に学び精進して芸を磨き上げてきた俳優人生は、日本の伝統芸能である歌舞伎を、真の世界遺産である舞台芸術にすべく、高みを目指す闘いでもあったことが、本書の端々から伝わってきます。人間国宝に指定された、そのいぶし銀の演技が育まれてきた半生を綴る言葉は、歌舞伎ファンのみならず、舞台芸術、ひいては絵画やクラシック音楽の愛好者まで魅了することでしょう。
第一章と第二章は2018年7月に著者が日経新聞朝刊に連載した「私の履歴書」を元に加筆、第三章はインタビューを元に構成された本書オリジナルです。
4歳の初舞台から、75歳の令和の舞台まで、歌舞伎公演、舞踊公演、テレビドラマ、映画まで一挙網羅した上演記録を巻末に付し、当たり役の舞台写真も豊富に収録しています。
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