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ルネサンス文化の粋を集めた緑の芸術
「全能の神は初めに庭園を造った。それは本当に人間の楽しみの中で最も純粋なものである」フランシス・ベイコンは、「庭園について」という一文をこう始めている。ルネサンス・イタリアにおいて、庭はそれ自体が時代のもっとも繊細な美学の具現化であると同時に、ペトラルカやボッカッチョの抱いた自然観を反映し、占星術の思想によれば植物は地上の星であった。庭は読み解きを必要とする総合芸術だったのである。
歴代の教皇たちやメディチ家ら貴紳たちが、財を蕩尽してつくりあげた庭は、最先端の自然科学・工学技術や博物知識の集積場であり、古代彫刻や同時代アートの屋外展覧スペースであり、強力な政治的メッセージを発するプロパガンダ装置でもあった。ラッファエッロの名を知らしめることになった、ヴァティカン宮殿の「署名の間」の傑作壁画は、部屋から外を眺めたときに生まれる視覚効果を意識して描かれている。室内装飾も庭と同じグランド・デザインの一部であった。
本書では、ヴィッラ・デステに至る数々の名苑奇園を具体的に読み解いていく。狭義の庭園史や美術史の枠におさまらない、領域横断的な視点をもったルネサンス文明史である。
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