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これまで,3次元回転の表現や解析に関する書籍は,物理に軸足を置くものが多かった。しかし近年,コンピュータの発展によって,身近な問題で3次元回転を扱うことが増加した。例えば,カメラや3次元センサーによる計測,コンピュータビジョン,コンピュータグラフィクスにおける3次元の解析やモデリング,また,ロボットの制御やシミュレーションなどにおいて3次元回転の計算処理が必要となる。
計算処理の中心はパラメータ推定であり,特にデータに誤差があるときが問題になる。本書では,はじめに3次元回転に対する入門的な解説を行い,次に一般の非等方,非一様な誤差に対する非線形最適化の原理を述べる。まず,解が解析的に得られる場合を示し,次に一般の場合の数値探索法として,微小回転がリー代数を成すという性質を用いた「リー代数の方法」を定式化する。そして,例として,コンピュータビジョンの代表的な問題に適用する。さらに,計算した回転の信頼性の評価法やその精度の理論限界についても述べる。
付録として,巻末に位相空間,多様体,リー群,リー代数についての簡単な解説を加える。
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