元禄忠臣蔵の作者、真山青果。その驚くべき全貌を初めて明らかにする書。
あまりに理屈っぽく長大な台詞、「暗い」人間認識は、今日の観客からは敬遠されるのかもしれない。
しかし、こうした苦悩を描いた点にこそ、青果が昭和初期の大劇場を代表する劇作家として広く支持された理由があったのではないか。
孤独感や人生のままならなさは、現代の人間にとってもけっして無縁のものでななかろう〓。
劇作家、小説家、研究者等、容易に捉えきれない様々な顔を持つ青果に、改めて光を当て、その全貌に迫る。
全貌を照らすべく、全体を「交友関係」「小説家・研究者」「劇作家」「青果作品小事典」「ビジュアルガイド」にわけ構成。「交友関係」では「真山青果の交友関係見取り図」を掲載。文壇、劇壇、近世文学研究の交流マップとしました。中村梅玉氏出席の【座談会】青果劇の上演をめぐっても収録し、演者からの視点も取り込み、ぼんやりとしていた真山青果像の輪郭を捉えます。
執筆は、飯倉洋一、日置貴之、真山蘭里、青木稔弥、青田寿美、有澤知世、井上泰至、大橋幸泰、神山 彰、熊谷知子、河野光将、後藤隆基、高野純子、寺田詩麻、仲 沙織、丹羽みさと、広嶋 進、福井拓也、宮本圭造、村島彩加、山中剛史、中村梅玉、織田紘二、中村哲郎、桑原寿紀の全25名。
○真山青果の台詞から
「恐れても恐るべきものは、人間、自分を赦しあまやかすと云ふ感情だ。年月を経る……、人は忘れる……、おれのやうな弱い者は、時に自分の過失を赦し、忘れようとする……場合がないとも限らん。おれは終生自分と戦ひ、自分を苦しめ、自分を虐げ、自己心中の賊を退治しなければならない。それがおれの一生の修行だ、おれが一生の……練習なのだ。」
『乃木将軍』初篇第一幕その二(『真山青果全集』第14巻)より
「おれは何日も、自分の議論が、流動し漂うてゐなければ不安でならない。議論が一に決定し固着する時、最も恐ろしい時と思ってゐる。天文に見ても、地球は自らを回転させつゝ、太陽の周囲を公転してゐる。時候に見れば、春に向ふ冬は、三寒四温の順序を繰り返しつゝその節に進んでゐる。ものはみな流動のなかに進歩をとってゐる。」
『坂本龍馬』第一幕・その二(『真山青果全集』第7巻)より
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