「こうしようと思う」ことと,「実際に動く」ことの間にいったい何があるのだろうか? パーキンソン病は,中脳という場所に存在するドーパミン神経細胞が失われることによって発症する病気である。パーキンソン病になるとただじっと動けなくなるというだけではなく,振戦というふるえ,つまり「動きたくないのに動いてしまう」症状が出たり,普段は歩けない床にチョークでラインを引いてあると歩けたりといったことが起こる。
ドーパミン神経細胞は,健康な状態では,大脳基底核という脳領域に投射している。つまりパーキンソン病の症状は,大脳基底核がドーパミンを受け取れなくなることで起きていると考えられる。しかしながら,パーキンソン病の症状はあまりにもミステリアスで,その説明はなかなか一筋縄ではいかない。実際に現在の最先端の研究でも,未解決の部分がたくさん残されている。
この本では,そんな思いどおりに動くための「大脳基底核」について,解剖,生理,薬理などいろいろな側面から解説した。未解決な部分は,できるだけ未解決であることがはっきり伝わるように書いたつもりである。未解決の部分を含めて読者の皆さんに少しでも興味をもっていただけるよう,専門的なやや難しい部分と読みもの的な部分,そして学術論文にはなかなか書けない筆者らの妄想も本書には盛り込んだ。研究分野として発展途上の領域のため,「わかる」ためではなく,「自分なりに推理する」つもりで読んでいただければと思う。
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