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1990年にマガジンハウスから刊行された『〈うさぎ穴〉からの発信』の復刊本。
河合隼雄は、児童文学を自らの生きる指針として読み、こよなく愛した心理臨床家の一人である。
臨床家としてクライエントと向き合う中で、著者は「たましい」との関係にしだいに深く気づかされていったという。目に見えず、ふれることもできない「たましい」の存在を、曇りなく澄んだ「子どもの目」ははっきりととらえることができる。だからこそ児童文学は、著者にとって生きる指針となりえたのである。
「たましいの存在について語るのは、ファンタジーという形がもっとも適している」。生き生きとした子どものまなざしは、豊かな感性の輝きを見いだすだけでなく、ときには身近な人の心の中に、言葉にならない深い悲しみをも読み取る。
1990年にマガジンハウス社から刊行された『〈うさぎ穴〉からの発信』の復刊本。子どものこころに温かく寄り添う、繊細で緻密な臨床家としての視点が、カニグズバーグをはじめ、エンデやケストナー、ギャリコ、また宮澤賢治や今江祥智、長新太、佐野洋子と、ファンタジーから絵本までの多彩な作品を、説得力ある言葉で読み解いてゆく。
「児童文学は、子どものためだけのものではなく、われわれが生きてゆく上で必要な深い示唆を多く含む。だから、若者や大人たちにこそ読んでほしいのだ」と言う著者に従って、子どもが主人公の物語を、いま一度読み直してみてはどうだろうか。
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