取り寄せ不可
ニシキヘビ、コブラ、ワニ、シマウマ、ラクダ、オオサンショウウオ、シロアリ、セミ、イモムシ、寄生虫やウイルスの心配のあるブタの生き血……これ、著者の石毛さんが80年を越える人生で食べたもののほんの一部。 悪食研究ではない。ところ変われば“ごちそう”を食べる、太平洋やアフリカなど辺境の地のフィールドワークの一環。文化人類学者として「食文化」をひとつの学問分野として認知させた業績の一端は日清食品の「カップヌードルミュージアム」に展示されている「麺の系譜図」などで目にすることができる。 考古学から出発し、京都大学探検部を経て文化人類学に方向転換、京大人文科学研究所の巨頭・今西錦司、梅棹忠雄の山脈に連なり、食だけでなく住居、信仰、衣料、性愛、遊びまで、世界をまたにかけ渉猟してきた研究者人生は、1970年の大阪万博に積極的にかかわり、国立民族学博物館(民博)の設立から主導的な役割を果たしてきた。 「人生の予定路線などつくらずに、その時ときどきの『おもろい』ことにうつつを抜かし、寄り道だらけで、何処へいくのか、自分でもわからない人生の時を過ごすのも悪くない」と本書で綴る石毛さんは、味の素や日清食品など日本の大手食品メーカーや日本酒造組合中央会など業界団体も巻き込み、その食文化研究はやがて既存の学問を越えていった。 京大と関西が優雅で華やかだった時代の空気も漂わせる自叙伝は、日本人の食の歴史を辿る、興味深い内容です。
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