「人工知能による芸術創作」という難題に取り組む孤高の作曲家がいた。クラシック音楽の大作曲家たちの名作の楽譜から膨大な音符のデータベースを構築し、コンピュータ・プログラムによって各音の関係を綿密に探ることで新たな創作の道を開拓したデイヴィッド・コープ。「心のない作曲家」、オズの魔法使いになぞらえた「ブリキ男」などと揶揄されながらも、バッハ風の新作コラールやマーラー風の新作オペラなどを実現していく彼の壮大な実験は、やがて「創造性」の真実を浮き彫りにする。ある者は言う。この音楽は人間の創造性を危機に陥れるものだと。しかしコープは言う。彼のプログラムは、人間の創造性をサポートするものであると。人工知能による作曲プログラムとして広く知られる「エミー(EMI/Emmy)」の開発プロセスとに加え、傍らにある視点と美学を丁寧に描き出した快著、待望の邦訳登場。本書を読まずして「人工知能と芸術」は語れない。
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