すべての現代人は,危機から無関係ではいられない。
自然災害に限らず,慢性的な病,人間関係上のトラブル,事故など,知らぬ間に巻き込まれ,意図せずにこころの危機に直面することは数知れない。生きていく基盤ともいえる大切な何かを失いかけた時,人のこころは危機に見舞われる。
本書は,そのこころの危機に個人,コミュニティ,社会レベルから,心理学がこれまで貢献してきたこと・できなかったこと・今後できること・すべきことについて論じ,予期せぬ“こころの危機”に遭遇した際に,それを可能な範囲で冷静に受けとめ,何某かの糧を見出していくために,役立つ情報を心理学から発信できることを目ざす。
「第1章」では,危機理論に始まるこころの危機の研究史を振り返り,危機支援のありかたと近年の研究動向について検討し,近年注目されるようになってきたレジリエンスと外傷後成長に関する研究を紹介し,続く「第1部 個人の危機とこころ」では,個人の中で起こる危機に,人はどう立ち向かい,再適応するのか,精神疾患・障害,学生相談,犯罪被害者,非行少年の観点から論じる。「第2部 コミュニティの危機とこころ」では,コミュニティの中で起こる危機に,人はどう立ち向かい,変化してしまったコミュニティに再適応するのか,学校・家族・対人関係(いじめやハラスメント)の視点から論じ,「第3部 社会の危機とこころ」では,社会の中で起こる危機に,人はどう立ち向かい,変化してしまった社会で生きることをどう選ぶのか,原子力災害,自然災害,デロの観点から論じる。
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