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本書は50歳になったばかりのユングが、自らの心理学を分かりやすく人々に語って聞かせたセミナーの記録であり、ユング自らがその口述記録を精査した信頼にたる一次資料でもある。
セミナー開会の辞として、ユングは「私自身の考えの発展を素描してみたい」と言って語り始めているが、学生時代の心理哲学的思索、精神病患者たちの心に寄り添って苦悩した体験、『赤の書』に記された壮絶なファンタジー体験、心理学とアートの弁証法的関係性への気づきなど、自らの体験を心理学へと結実させていく実践的過程を包み隠さず公開している。
特に『赤の書』に記されたファンタジーをユングがどのように体験し、それといかに関わり、またそれをどうやって理解していったのかが、詳細かつ克明に記録されている。なぜファンタジーから心理学が生まれてくるのか、心理学の生成とはいかなるものなのか、ここにはその答えがありのままに記されている。
また、ユングがこれほどアートやアート作品について率直に語り、心理学の対話相手としてアートを取り上げ、アートと心理学の本質的な関係を明示している書物も他に類を見ない。
さらに言えば、ユングはこのセミナーで、参加者の質問に対して驚くほど丁寧に回答しており、その様子には心理学を教え、次世代を育てようとするユングの臨床的姿勢がありありと表れている。最終講義では、参加者たちに小説の心理学的解釈を課し、彼らの解釈をユングが部分修正しながら、ファンタジーの中に現れる心理学の本質を対話的に明らかにしようとしている。それはまるで心理臨床事例へのスーパーヴィジョンのように作用しており、そこにはユングの分析実践そのものを感じ取ることができる。
本書には、自伝的・理論的・臨床的ユングがすべて網羅されているのである。
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