独りの偵察隊 亡命チベット人二世は詠う

独りの偵察隊 亡命チベット人二世は詠う

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出版社
書肆侃侃房
著者名
テンジン・ツゥンドゥ , 劉燕子 , 田島安江
価格
2,200円(本体2,000円+税)
発行年月
2019年6月
判型
四六判
ISBN
9784863853645

ダライ・ラマ一四世と八万人の亡命から六十年
インド生まれの亡命チベット人二世が詠う魂の詩文
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ラダックからは
チベットがチラッと見える
ドゥムツェの黒い丘が見えたら
そこからチベットだよ
初めて祖国を見たとき
大地の匂いを思いきり嗅いだ
土をしっかり握りしめた

編訳者覚書


独りの偵察隊

ラダックからは
チベットがチラッと見える
人は言う
ドゥムツェの黒い丘が見えたら
そこからチベットだよ
初めてぼくが我が祖国チベットを見たときのこと
急がねばならぬ密かな旅の途中
その盛りあがった丘に立った

大地の匂いを思いきり嗅いだ
土をしっかり握りしめた
乾いた風と野生の老いた鶴の声に
耳を澄ませた

国境などどこにも見えない
誓って言うが、そこには何もない
変わったところなどないのだから

あそことここの違いなど
ぼくには分からないよ

人は言う
毎年、冬になると、キャン(野生のロバ)がやって来ると
人は言う
毎年、夏になると、キャンは戻っていくと

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