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◆作品紹介
午睡がおわった。
浜へ出る。
日の傾きはおそい。
虹をとかした白線がうちおろす。
白砂が靴底へからみ、こぼれる。
かまってほしい子どもらを蹴飛ばしてゆくように、
無下にあしらう残酷さのきざしに、
淡い快をも感じたりしつつ。
海鳴りは飽きた。
ときおりここへくる人は、みんなこの青い水たまりに感嘆する。
辺境の故郷への幽閉はひどくおそれるくせに、
ときおりなぜか幸福げにおとずれはしゃぐ帰郷者たちのように。
なつかしいのだろう。
時々ということ。つかの間のアバンチュールのごとき余裕が、
そうした酔いと感傷じみた想いにさそうのだろう。
風がうっとうしく、肉や血や記憶の匂いをはこび、
望みもしないこちらの顔にたたきつけてゆく。
焼けた砂をときおりなだめにくる汀では、
小麦色のサルたちが奇声をあげ、宙にビーチボールをうつ。
帝国末期の銀貨幣の髪色した女は、せわしなく水着のずれをなおす。
裸と大差ないんだから、どうせなら脱ぎ捨てればいいのに。
おサルさんみたいで、おサルさんにもなりきれない……
それが悩ましいトコロ。
顔がかくれるほどにガムふくらませ通りすぎた。
しぼむ途中はじけ、鼻のあたまにネーブルの香りはりつき、ちぎれる。
明日は雨がくるだろうか。
ひけらかす陽をあおぐ顔をつまさきへ。
文明の轍のように、くつは砂を蹴散らしてゆく。
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