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1941年2月、クリヴィツキーはワシントンのホテルで謎の死を遂げた。1930年代に西ヨーロッパ各地で活動していたソ連の多数のスパイを束ねる諜報機関の長だった。彼が遺した一冊の本がこの回想録である。
ここにはヒトラーのドイツや、内戦のスペインに対してスターリンがとった政策と権謀術数が、ソヴィエト体制内部の現場から証言されている。また稀有な規模に拡大した粛清とその裁判の実態、そこで犠牲となった古参ボリシェヴィキ、赤軍の将軍たちの最期が戦慄をもって描かれている。
1939年の刊行後、本書は一時その信憑性を疑われ、著者の実在も否定されていた。しかし今では、スターリンに対する最初の告発書のひとつとして、また現代史の第一級のドキュメントとして評価が定まり、1991年には遂にロシア語版が日の目を見た。半世紀をかけて、クリヴィツキーを欧米各地に追い求めてきた訳者による解説がその経緯を物語るだろう。
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