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深遠でコミカル、重くて軽快。著者五年ぶりの傑作長編小説。自然、人間の体、こころの入り組んだ痛みは家の治水、三十肩、鬱と絡み合い、主人公を彷徨えるツボ・椿宿へと導く。皮膚科学研究員の佐田山幸彦は三十肩と鬱で、従妹の海子は階段から落ち、ともに痛みで難儀している。なぜ自分たちだけこんな目に遭うのか。外祖母・早百合の夢枕に立った祖父から、「稲荷に油揚げを……」の伝言を託され、山幸彦は、鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。屋敷の中庭には稲荷の祠、屋根裏には曽祖父の書きつけ「f植物園の巣穴に入りて」、明治以来四世代にわたって佐田家が住まいした屋敷には、かつて藩主の兄弟葛藤による惨劇もあった。『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。歯痛から始まった『f植物園の巣穴』の姉妹編。
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