サイロ・エフェクト

文春文庫

サイロ・エフェクト

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出版社
文藝春秋
著者名
ジリアン・テット , 土方奈美
価格
1,122円(本体1,020円+税)
発行年月
2019年5月
判型
文庫
ISBN
9784167912895

1999年のラスベガス。ソニーは絶頂期にあるように見えた。しかし、舞台上でCEOの出井伸之がお披露目した「ウォークマン」の次世代商品は、2つの部門がそれぞれ別個に開発した、2つの互換性のない商品だった。それはソニーの後の凋落を予告するものだった。

世界の金融システムがメルトダウンし、デジタル版ウォークマンの覇権をめぐる戦いでソニーがアップルに完敗し、ニューヨーク市役所が効率的に市民サービスを提供できない背景には、共通の原因がある。それは何か――。謎かけのようなこの問いに、文化人類学者という特異な経歴を持つ、FT紙きってのジャーナリストが挑む。

企業であれ自治体であれ、高度に技術が発達している現代、あらゆる組織は「サイロ化」という罠に陥りがちである。分業化したそれぞれの部門が、それぞれの持つ情報や技術を部署の中だけでとどめてしまい、隣の部署とのあいだにも壁を作ってしまう。日本語では「タコツボ化」と呼ばれるこの現象は、どんな組織でも普遍的に存在するのだ。

経済学的な観点からすれば、身内での無駄な競争を生むような「サイロ」は、とにかく有害で無駄なものであるから、トップが「サイロ撲滅」の掛け声をかければ解決に向かう、と思いがちだ。ソニーの新しい経営者・ストリンガーも最初はそう考えた。しかし、彼は失敗した。壁は極めて強固で、一度できたサイロは容易には壊れない。

文化人類学者の視点を持つ著者は、「サイロ」が出来上がるには人間に普遍な原因があり、そのメカニズムを解き明かすところから始まる、と説く。人間に求められる技術が高度で専門的になればなるほど、サイロはむしろ必要とされるからだ。

人間は必ずサイロを作る、ならば、その利点を活用しつつ、その弊害を軽減する方法を探ろうとする画期的な論考が、本書である。

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