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15世紀末以降、アジアからアメリカに至る広大な領域を支配下に治めたスペイン帝国を支えた膨大な文書群。大西洋、太平洋、インド洋を縦横に行きかった膨大な文書ネットワークシステムの具体的な分析により、スペイン帝国の世界統治の実態に迫る。〓
…15世紀末以降、アメリカ大陸「発見」を契機に海外征服・植民地化事業に乗り出したスペイン帝国の統治原理は、「文書主義」の優越というイデオロギー―口頭伝達よりも文書を介したコミュニケーションを重視し、「文書への信頼」に基づいて人間関係の在り方や社会の仕組みを支えようとする心性ーによって支えられていた。マドリード王宮の発する命令書簡から、インディアス(新大陸およびフィリピンのスペイン領植民地)の最末端で作成された先住民請願書に至るまで、さまざまな文書が無数に行き交い、二つの大洋をまたいで縦横に横断し、大陸間を接続する壮大な文書ネットワークが展開された。ネットワークの網の目に沿って、植民地経営の実務を支えるヒトやモノ、情報の流れが構造化され、領域の隅々にまで拡張されることで、近代初期ヨーロッパで類をみない規模の世界帝国を支えた統治機構の礎が整備されていったのである。本書は、多面的かつ複雑な、スペイン帝国の文書主義の実態について、スペイン、ラテンアメリカ、アジア各地での実地調査を通じて史料分析の研鑽を積んだエキスパートたちの知見を総合し、中世までヨーロッパの一辺境にすぎなかったスペイン王国を世界規模の一大帝国へと押し上げた原動力について、文書研究の視座から究明することを主な目的とする。
第1章は植民地財政の管理統制のためにスペイン領アメリカに導入した財務監査制度の役割と、文書を媒介とした中枢/周縁関係の成り立ちを、第2章はフィリピン総督府とスペイン王室間の行政通信文書から文書流通の全体像を明らかにする。第3章は近代初期ヨーロッパ最大規模ともいわれるスペイン異端審問の巨大アーカイブズシステムの歴史的過程を、情報検索インデックスの変遷から分析。第4章はイエズス会南米パラグアイ管区での「年報」の流通・保管プロセスを、第5章はモホス地方のイエズス会ミッションで作成された洗礼簿の形態変化から、集住化の二重プロセスの実相を明らかにする。第6章はラパスの公証人作成の売買契約証書と公証人マニュアルの書式見本とを比較し本国との間で築かれた歴史的関係を論じ、第7章はテンプル/聖ヨハネ騎士団編纂のカルチュレールを検証し機能分化論的アプローチを提起する。第8章はメキシコ市の有力エンコメンデーロであったインファンテ家とインディアス諮問会議との100年余の文書応答プロセスを、第9章は植民地期中期、メキシコ中部ナワトル系先住民による土地文書群の歴史的生成プロセスを、第10章は17 世紀ペルー副王領ワマンガでの公正証書を分析し、スペイン征服以降導入された公証人制度の利用実態を、第11章は17世紀メキシコの商業帳簿から帝国行政と植民地商人の関係性を明らかにする。第12章は本共同研究での文書実践を分析し、集合知の形成を人文情報学的な手法を用いて可視化する。
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