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将棋界ではプロ棋士が毎日の対局で新しい手、新しい工夫を試しています。
その中で、1年にいくつかは大きな影響力を持つ「新手」が生まれます。
これだけでも十分珍しいことですが、年に1度、もしくは数年に1度「新戦法」が生まれます。トップ棋士をはじめ多くの棋士が採用して流行戦法となります。「矢倉左美濃急戦」や「雁木」などがこれにあたります。
この「新戦法」よりさらに珍しい現象があります。それは「新しい囲い」が生まれることです。
将棋の囲いには玉の位置や守備駒の連結など、かなり限定的な条件があるため、新しい囲いが生まれる余地はほとんどないといって過言ではありません。
それが、つい最近生まれたのです。「新しい囲い」が。
その名も「エルモ囲い」。コンピュータ将棋ソフト「elmo」が多用したことでこの名がついています。プロ棋界では飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中の大橋貴洸四段が連採し、高勝率を挙げたことで注目が集まり、関西の若手棋士を中心に現在大流行しています。
「エルモ囲い」は対振り飛車の囲いで、居飛車はこの囲いから急戦を仕掛けます。
舟囲いは美濃囲いに比べてどうしても薄くなるため、居飛車からの急戦は振り飛車には通じない、というのがこれまでの常識でしたが、それを覆す戦法が現れたのです。
四間飛車にも三間飛車にも使え、なおかつ先手でも後手でも使える戦法。
それが「エルモ囲い急戦」です。
舟囲いに比べて駒の連結が良く、低い陣形のため強い戦いが可能です。
また、展開によっては5筋に飛車を回る手や、最終盤で▲6九玉と落ちる手段もあります。
ただ、持久戦には不向きなため、仕掛けたら攻め切ることが大切です。
では、エルモ囲いにおける有効な仕掛けとは何でしょうか?
あるいは、その仕掛けを成功させるために必要な手筋、手順とはどんなものでしょうか?
それを解説したのが本書です。
本書は関西若手の研究家、村田顕弘六段がこの新しい囲いについて本格的に解説した初めての戦術書となります。
振り飛車に急戦は無理、と諦めていた居飛車党のみなさん、居飛車穴熊を始めとする持久戦以外でも振り飛車に勝てるんだということを、本書が証明します。
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