こわい、こわい

こわい、こわい

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出版社
三一書房
著者名
黄英治
価格
1,980円(本体1,800円+税)
発行年月
2019年4月
判型
B6
ISBN
9784380190025

本書に収めた短い小説たちに修正と加筆をしながらふと苦笑したのは、これらの作品のほとんどが在日朝鮮人の〈死〉を、さまざまに、飽きもせずテーマにしていることだった。そうなったのは、私が先に逝った在日一世や二世たちの追悼を引き受けなければならない年齢に達したからだろう。ある在日朝鮮人の死には、植民地主義の歴史と現在が深く刻印されている。残念ながら、どんなに平穏であろうとしても、在日朝鮮人は植民地主義の暴力から、いまだ解放されていない。

 「植民地主義は他者の系統だった否定であり、他者に対しての人類のいかなる属性も拒絶しようとする凶暴な決意である。故に、それは被支配民族を追いつめて、『本当のところおれは何者か』という問いをたえず自分に提起させることになる」(フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房)

 本短編集に通底するもうひとつのテーマは、植民地主義――ヘイトスピーチ、ヘイトクライムに対する足〓きにも似た抵抗と対峙である。これも唇を噛みしめながら、ひたすら反復している。と同時に、反復は少しずつずれている。小説でしか表現できない虚構的現実が、読者にとって新たな経験となり、不可視の何かを実感的に捉える手掛かりになれば、と願う。

 私たちは、植民地主義の克服という世界中が同一の問題を抱えている世紀に生きているのは間違いない。そして、私たちは〈いま〉から逃走できない。〈いま〉が私たちの時代であり、〈いま〉を生きるしかない。だから私は、これからもこの〈いま〉ではない、別の〈いま〉を求めて細々と書きつづけていくだろう。(あとがきより)

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